電動バイクが爆発!?中国で相次ぐ「バッテリーからの出火」の原因は?

  • 2021年5月13日
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電動バイクが爆発する事案

中国では電動バイクが爆発するという事案が相次いで報告されています。
死者や重傷者も出ている状況で、日本製の電動バイクがこんなことになれば企業価値は一瞬で吹き飛んでしまうレベルです。

電動バイクから出火・爆発する動画をいくつかピックアップしましたのでご覧ください。

【中国の北京市でこのほど、家の中で充電中の電動キックボードが突然爆発炎上する事故】2018/07/29

事故が発生したのは7月29日の夕方ごろ。ソファで娘とくつろいでいた男性は、爆発音に驚きとっさに充電中の電動キックボードのコンセントを引き抜いた。ところが、数秒後には激しく燃え上がり、部屋中に煙が充満。男性は娘を連れて避難していたためけがはなかった。 当時、隣の家でマンションの管理会社職員が作業していたためすぐに駆けつけることができ、電動キックボードを廊下に移動させ火を消した。被害は周りにあった家具に留まり、被害額は約2万元(約33万円)だと男性の妻が語っている。 同妻によると、電動キックボードはネットで購入したもの。7月6日に購入し2日後に商品が届いたが、塗装がいい加減だったため販売店に交換を要求し、同月21日に映像で爆発した商品が届いた。事故後、メーカーに問い合わせたが、「爆発した商品を送ってほしい」と言われ、証拠がなくなると自分が不利になると考えメーカーの要求を拒否。取材に対しメーカーは「問題の商品が手元にないため詳しい原因は分からないが、弊社の商品は厳格な検査を実施している」と語っている。 現在、問題の商品は販売店から撤去され、メーカーと販売店が対応を進めている。英道はネットで出回り話題になっており、「品質が悪いバッテリーの問題だろう」「監視カメラがあってよかった。映像がなかったらメーカーは言い逃れするだろうから」といった声が代表的な反応だった。

【中国 エレベーター内で電動スクーター炎上、生後5か月の乳児ら5人やけど】2021/05/10

中国・四川省で10日、団地のエレベーターの中で電動スクーターが突然、炎上し、乳児を含む5人がやけどを負ったということです。  エレベーター内の様子を収めた防犯カメラの映像。突然、電動スクーターから煙が上がり、直後に激しく炎上、居合わせた人たちが炎に包まれます。  中国の四川省・成都市で10日、団地のエレベーターの中で電動スクーターが突然、炎上する火災が起きました。中国メディアによりますと、エレベーター内には男性3人と生後5か月の赤ちゃんを抱いた女性がいて、5人はやけどを負い、病院に搬送されたということです。  地元当局は、電動スクーターが出火した原因を調べています。(11日15:20

特に整備不良やバッテリー劣化のような状況ではなく、新品に近い電動バイクが突如爆発したとのことです。
電動バイク以外にも中国製品ではよく爆発の恐れがあると聞きます。スマホが爆発した。充電器が爆発した。チィナボカン。などという言葉をを耳にする機会が増えました。

電動バイクが爆発する原因

そもそも電動バイクが爆発する原因は何なのか。どこが爆発しているのかというところも疑問ですね。

まず、電動バイクのどこが爆発しているのか。についてはほぼ「バッテリー」です。

電動バイクに搭載されるバッテリーの種類はの2つ

【鉛バッテリー】と【リチウムバッテリー】

【鉛バッテリー】

  • メリット
    ・製造コストが安い
    ・自己放電率が低い
  • デメリット
    ・大きい
    ・重い

【リチウムバッテリー】

  • メリット
    ・小さい
    ・軽い
    ・高電圧
    ・繰り返し充電に強い
    ・自己放電率が低い
  • デメリット
    ・製造コストが高い

リチウムバッテリーは小型化が可能

リチウムバッテリーは鉛バッテリーよりも30%〜50%程小型化でき、重量も応じて軽くなる。
仮に、鉛バッテリーが約3kgだとすると、リチウムバッテリーは1.5kg~2.3kgほどになる。外装部分などで上下はするものの、非常にコンパクトで軽量化できる為、小型化が必要な電動バイクに最適です。

リチウムバッテリーは長持ち

充放電回数も鉛バッテリーよりも5.7倍以上になる為、非常に長持ちする。
仮に、鉛バッテリーが充放電350回だとすると、リチウムバッテリーは2000回以上になる。バイクなどの人命に直結するようなバッテリーの長寿命化は必須。

自己放電率が非常に低い
自己放電とは経年劣化のようなもので、何もしなくてもバッテリーの充電量が減少するというもの。満充電したのに1年触らなかったらバッテリーが切れていた。なんていうのはこの事故放電現象によるもの。1か月の自己放電率は鉛が1.5%程度に対し、リチウム電池は1%~10%となっています。同じ2次電池であるニッカド電池やニッケル水素電池が10%~30%の自己放電率なので、約5分の1程となっています。

なぜリチウムバッテリーが爆発するのか

本題の爆発の原因。
「ショート」です。リチウムバッテリーがショートすると瞬間的に非常に大きな電流が流れます。許容を超えた電流は発熱し瞬時に高温になります。

リチウムイオン電池は一般的に可燃性の有機電解液を用いていることが爆発の所以。負極に保護膜を作るのに必要な炭酸エステル類(炭酸エチレン(EC)や炭酸ジメチル(DMC))は高い可燃性を持つため、ショートした時の高熱で燃焼してしまうという訳です。

では「なぜショートするのか」という疑問です。
ショートとは、電池の「プラス」と「マイナス」が直接つながる事を指します。「短絡(ショート)」

外部衝撃によるショート

ショートの原因として代表的なものは「外部衝撃」です。バッテリー本体や電極部分、その他周囲の変形がショートする事の原因の大多数です。
先の動画では、一見なにも衝撃を加えていないように見えますが、この時点でショートする寸前だったのかもしれません。あと少しの衝撃でバッテリーがショートするという状態でエレベーターに乗ってしまったのかもしれません。

一般的には絶縁材などで電極部分を保護していますので万が一にも爆発など想像もつかないものです。令和現在の日本では、人命にかかわるような爆弾を積んだ商品を売れませんが、電動バイク爆発事故の一件ではどうだったでしょうか。。

また、内部ショートも考えられます。
・セパレータ不良
・コンタミネーション(製造時異物混入)
・金属析出

セパレータ不良によるショート

セパレータとは電池の正極と負極の両極の接触および短絡を防ぐ役割を担っている隔膜の事ですが、これが役目を果たせない場合に内部ショートが起こります。充放電の反復によってセパレータが破損し、電極がショートします。他にも、電池材料として使われているコバルト酸リチウムが過充電によって分解され燃焼するなどいくつかのセパレータ不良の原因が考えられます。

コンタミネーション(製造時異物混入)によるショート

バッテリー内部に異物が混入し、セパレータを突き破る等で起こるショートです。精密機器を製造する部門では異物の混入は非常に稀ですが、国外の工場で短期的に大量生産されるようなものについては、コンタミネーションが起こっても不思議ではありません。

金属析出によるショート

金属析出とは、液相・固相において、元の相から分離される現象の事。晶出(結晶化)とほぼ同義であるが、生成した固相が明瞭な結晶相とならない場合も析
出に含む。つまり簡単に表現すると、結晶化して分離して危険な状態ということ。

金属析出がショートの原因となるメカニズムについては、
岡山大学の後藤准教授が【蓄電池過充電時の金属析出メカニズムを解明~発火事故を防ぐための安全性評価に貢献~】という研究内容を発表している。(令和2年7月30日)
これまでは、電池内部での金属析出の様子を直接観察することは困難でしたが、この発表は電池利用技術の発展に大きく貢献する事が期待されています。

【蓄電池過充電時の金属析出メカニズムを解明~発火事故を防ぐための安全性評価に貢献~】

岡山大学大学院自然科学研究科・後藤和馬准教授のグループは、物質・材料研究機構(NIMS)
先端材料解析研究拠点・端健二郎主幹研究員のグループと共同で、リチウムイオン電池やナトリ
ウムイオン電池が過充電された際に負極に生じる金属析出現象をリアルタイムで観測することに
成功し、電池の発火事故の原因となる過充電のメカニズムを解明しました。本研究成果は、5 月 19
日付で英国科学雑誌「Journal of Materials Chemistry A」のオンライン版に掲載され、また 2020 年
の同誌 Hot Papers に選出されるとともに 7 月 28 日号の内表紙に採択されました。
リチウムイオン電池はスマートフォンやノートパソコン、電動工具などの電源として幅広く利
用されていますが、電池を過充電すると電極内に金属(リチウム)が析出し、これが内部ショー
ト、発火の原因となります。本研究では、これまで直接観察が難しかった電池電極内部での金属の
析出の瞬間について、核磁気共鳴分析(NMR)によりリアルタイムで観測することに成功し、電
極構造の違いによる金属析出のしやすさを明らかにしました。
本成果は二次電池の過充電に対する安全性限界を見極める技術として、既存電池や新規電池の
特性評価や電気自動車(EV)用リユース電池の安全性評価等に有効であり、電池利用技術の発展
に大きく貢献することが期待されます。

https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r2/press20200730-8.pdf

金属が析出する要因としては、「コンタミネーション」「活物質」「過放電」

コンタミネーションによる析出

コンタミネーション時の細かな金属片が蓄積されて不純物由来の析出物となってしまう場合があります。

活物質(電池の容量を担う電極材料)による析出

電極間を移動できないリチウムイオンが金属リチウムとして析出し、正極-負極間をショートさせる可能性があります。

過放電による析出

過放電の状態で負極から溶け出した銅が析出物となってしまう可能性があります。

燃えないリチウムバッテリーの開発

このように一概に「ショート」といったところで、原因は全くもって素人には様々で複雑怪奇です。

なぜこんな危険なものを搭載しているのか。この怪しい素材たちも危険が伴うのも事実ですが、物品自体は構成上必要なものです。このような危険性を孕むものを安全に組み合わせて商品化して今の便利な世の中が出来上がっているといっても過言ではありません。厳格な管理体制の元、いくつもの基準を満たして安全と判断されたものが世の中に出回ります。(基本的に、日本では)

もちろん日本ではさらにバッテリーの安全性を高めるためにも、燃えない電解液の開発も進んでいます。
東京大学の研究グループが2020年3月に可燃性の炭酸エステル類(炭酸エチレン(EC)や炭酸ジメチル(DMC))に代わる難燃性と機能性を持つフッ素化リン酸エステル(TFEP)を開発しています。【多機能電解液の合理的分子設計-安全、高エネルギー密度、長寿命の新型リチウムイオン電池へ-】

実用性の有無はここでは言及しませんが、開発した溶媒は既存の電池生産ラインでそのまま使用することができるメリットもあり、ほぼ全ての正極・負極材料で直ちに実証試験が可能ということです。

【多機能電解液の合理的分子設計 - 安全、高エネルギー密度、長寿命の新型リチウムイオン電池へ-】

リチウムイオン電池は、現時点で最も優れた二次電池であるが、その唯一の欠点とされているのが安全性である。スマートフォンやノートパソコン、電気自動車等においてリチウムイオン電池に起因する火災事故が多く報道されている。その主な原因は可燃性の有機電解液である。繰り返し充放電のためには、負極に保護膜を作る特定の有機溶媒(炭酸エステル類)が必須とされてきたが、非常に燃えやすいことが問題となっていた。

東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授と東京大学大学院理学系研究科の中村栄一特任教授らのグループは、炭酸エステル類に代わる多機能溶媒を設計・合成することに成功した。この溶媒は、炭酸エステル類と難燃剤の特徴を融合した合理的な分子構造を有し、両者の特徴である保護膜形成、難燃性、及び酸化耐性の全てを兼ね備えている。リチウムイオン電池用電解液として採用することで、高い難燃性が得られるとともに、高電圧化と長寿命化が同時に達成可能であることが分かった。溶媒自身が多機能であるため、当グループが取り組んでいる“濃い”電解液(高濃度電解液)とする必要もなく、既存の電池生産ラインをそのまま使用可能である。

本研究成果により、分子の構造と機能を結びつけた合理的な電解液設計が可能であることが実証され、二次電池材料の開発は新たな展開を迎える。開発した新規電解液が可能にする新型リチウムイオン電池は、高度な安全性、高エネルギー密度、長寿命の全てが要求される電気自動車や電力貯蔵用途の大型二次電池として最適であり、持続可能な低炭素社会の実現に大きく貢献する。

本研究成果は、異分野先端学際融合による世界トップの知の創出を掲げる東京大学において、五神真総長自らが声をかけたことをきっかけとして始まった、工学系(山田淳夫教授:無機化学・電気化学)および理学系(中村栄一特任教授:有機合成化学)超部局間共同研究により達成されたものである。2020年3月2日付の英国学術雑誌Nature Energy電子版に掲載された。なお、本研究は日本学術振興会科学研究費補助金特別推進研究(No. 15H05701及びNo. 19H05459)による支援を受けて行われた。

図1: 溶媒分子の設計。負極へのSEI保護膜形成能力のあるECと難燃剤として使われるリン酸エステルの分子構造を融合することで、両者の機能を兼ね備えた溶媒となる。更にフッ素化することで、酸化耐性及びAl腐食抑制機能が付与される。

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2020/6717/

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